プロローグ

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我々日本人は、悪しき行いや災いを目にする度に、神に祈るがごとくいつもこう考えてきた。
「災は自分の身には決して起きない。いつもそう祈っていれば起きないはずだ」
「タブーは口にさえしなければ現れず、たとえ現れても目を瞑り、じっと耐えていれば立ち去るってくれるはずだ」
だがそれは、何の根拠もない“祈祷”という名の古き悪癖であり、ただの思い込みにすぎない。

福島の原発事故もそうだった。

嘗て、東海発電所を取材で訪れた日、私はそれが当然あるものと思って尋ねた。
「万一の放射能漏れ事故対策として、どのような防災対策システムをお使いですか?」

全国13の電力会社が出資している「日本原電」のお偉方達は、こう答えた。
「それはあってはならないことだから」

驚いて聞き返すと、そこにいた全員が、まるで呪文のように完璧に同じ台詞を一斉に繰り返した。
その口の端に浮かんでいた不気味な薄笑いを、私は未だに忘れることができない。
そして翌1999年の9月、日本で初めての臨界事故が発生し、被ばくによる死亡者が出た。

これを読んだ人の多くは、それが本当に起きた事とは、すぐには信じられないだろう。
当時の私も、貴方がたと全く同じだ。
しかし私は取材記者であり、一人のマニュアルライターである。
仕事は、あくまで真実のみを正しく伝える事だ。
そしてどれほど信じ難い、信じたくない出来事だろうと、消去法で残った答えには必ず真実がある。

私は、2007年から丸3年以上、日本人テロリストが操る「STUXNET」により、凄まじいアタックを受け続けた。 そして一旦過ぎ去ったと思われたそれは、2015年3月に再び始まった。

私がいま成すべき仕事は、この極めて複雑で、謎に包まれた世界で最も危険なサイバー兵器と、人の生命を奪い、良心の呵責さえ覚えず、保身の為だけに破壊を繰り返す一人の凶悪な日本人テロリストの真相を、出来るだけ多くの人にわかり易く伝える事である。

日本はいま、狂ったサイバーテロリストを内に抱えた、世界一危険な国となった。
さらにその背景には、危険性を百も承知の上で、ただ単にサービスを普及させた電力業界の無責任さと、テロ行為を目にしていても、それと認識する事さえできない脆弱な日本の警察の実態がある。

“安全神話”はただの錯覚にすぎない。
安全とは、自らの手で獲得すべきものである。
そして誰かが“臭いモノ”に再び蓋をする前にそれを止める、それが本文書の目的である。

すでに2人が、この凄まじいサイバーテロのアタックの犠牲となり、命を落としているのだ。
3人目の死者を決して出してはならない。
誰かの住まいが、これ以上破壊される事に目をつぶってはならない。
そうなる前に、何としても凶悪なテロリストを捕える。

それが一人の日本人としての、私の使命である。

2016/04/20
~I am an Angry Falcon~