第4章 サミットの誘引(2015~)

4-5.ゲルフォース・陰謀

この日本人テロリストには、何の思想も目的意識もない。
単に欲しいモノを人から盗み、性的快楽を貪り、デジタル空間上で権力を握り、保身の為に“撒き餌”を撒き散らす。ただ楽しみとして、それを続ける為だけに、延々と破壊と汚染を繰り返す。
言わば、幼児の残酷な“いたずら”と同質の、無秩序犯罪である。
その点で、いわゆる組織犯罪としてのテロリズムとは、完全に一線を画す。

以下は、過去から現在まで、私が自分の眼でシステムの異常、つまり「キノコ」による汚染を確認した大手サービスのリストだ。

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Skype、Google、GoogleMap、YouTube、Flickr、Outlook 、NTT固定/公衆回線、KDDI-au。 道路などの監視カメラ網。国内のVISAクレジットカードシステム。

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この眼に見えない悪意の網は、電力網、電話回線、モバイル通信網、メールサービス、検索エンジン、道路などの監視カメラ網など、各種のネットワークレイヤーに及んでおり、その様子は、さながらカビの菌糸が厚みを帯びながら、じわじわと宿主を包み込んで行く様に似ている。
そのため私はこれを、「ゲルフォース」と呼んでいる。

「ゲルフォース」の資金源は大きく3つある。
盗んだビットコイン、仮想空間上でやはり人から盗んだ多くの会社から吸い上げられる、まとまった仮想通貨、さらに、自作したエクスプロイトを部分的に闇で切り売りして得られる収入だ。
昨年発見され話題となった、銀行システム用のエクスプロイトも、高額で取り引き出来るため、同様に切り売りされたモノと考えている。捜査の眼を逸らす上でも、それは効果的だ。

そしてサイコパスSの目的は、現金でも、思想を貫く事でもない。
目的は常に一つだ。昔からよく口にした、拘りのある「出入り自由な家」を作る事である。

いつどんな場所でも好きなように侵入し、プライバシーの覗き見、行動の監視、データの改ざん、そして電撃アタックによる嫌がらせや攻撃、システムの汚染などを、好き勝手にやりたい。
その為に、あらゆる場所に裏口を作り、無防備状態にしておくという事を、長い間やってきたのだ。
日本に身を潜めながら外国人のテロ集団に成り済まし、膨大な数のエクスプロイトを作り続けてきたのも、全てその為である。

このテロリストの大いなる陰謀、それは誰にも脅かされる事のない偉大な権力を、デジタル空間上で自分一人の手で握る事。すなわち至上最悪のサイバーテロ計画である。

そして日本がサミットとオリンピックを控えた事で、凄まじい勢いでその「ゲルフォース」を拡大し始めた。
やがて人々は、汚染されたサービスを利用する事に慣れきってしまうだろう。
だがそれこそが、Sが待ち望む恐怖とカオスの世界なのだ。

日本国民と警察、各国の捜査陣は、そこに隠れている最大の脅威と罠を知るべきである。
なぜならそれは、Sにとって都合の悪い相手は誰であろうと、自宅の住所と座標を特定し、行動を監視し、最終的には高圧電流による攻撃を許す事になるからだ。

“常識”という名の壁を取り払い、目を見開いて周りをよく見回してみるといい。

フェリー火災発生と同じ8月、京都で一般の家屋一軒が落雷により丸焼けとなった。
家人は留守中で死傷者は出ていない。
ただし近所の証言では、その時に雷が落ちた音を数回立て続けに聞いたという。自然の雷は、細かく立て続けに落ちる事はない。そして無人であった事も不自然だ。
7/30日深夜、私が目にした、5~6度火花が散ったエアコンへのアタックと同じ現象である。
嘗て私の住居がそうだったように、この家屋も“致死的アタック”の実験台にされたのだ。

同月、やはり無人で火気のない場所で、大規模な爆発が立て続けに起きている。
アメリカ軍の基地内で起きた、無人倉庫の爆発事故。
さらに数日後、使用されていない湾岸地域の巨大倉庫で起きた爆発事故がそれだ。

7年前、「STUXNET」による破壊は100V以下の機器だけだった。
しかし今ではより高圧の電撃アタックが可能になり、事実上、凄まじい破壊力を備えたサイバー兵器と化した。しかも操る人間は、切れ易く、留まる事を知らないサイコパスなのだ。

もし僅かでも、自分を捕えようとする動きを見つけようものなら、このSは一切容赦はしない。
即座にその関係者の自宅や家族を特定し、その日の内に襲うだろう。

昨年、日本年金機構を襲ったハッキングは、その迎撃態勢のための準備の一環だ。
あらゆる組織の個人情報を握っておく事で、それと特定された人間をいつでもアタックできるようにしておく。
こうして全ての情報を先に盗むというやり方は、Sが昔から好んでそうしてきた、先手戦法である。
敵になり得る人間の情報は、何もかも手に入れてておかないと気が済まない。
サイコパスであるが故に、ある種の妄想が常に張り付き、この人物を掻き立てて止まないのだ。

そして「STUXNET」による破壊活動と「キノコ」によるシステム乗っ取り、この2つは、電源からの不正侵入を完全にブロックする以外、防ぐ手立てはないのである。