第3章 サイコパス

3-5. 5つの大罪

人は誰もが無意識にこう信じている。
「どんな悪党でも、後ろめたさを感じる瞬間が必ずあるはずだ」
ところがこの人物には、それがないのだ。

~破壊、盗み、嘘と成り済まし、強要、無慈悲~

Sという人物は、これら5つの罪を遊びで行う。
特に“破壊”と“無慈悲”は極端である。
他人の住居や生活を破壊し、さらにそれによって人の命を奪ったとしても、毛ほども罪悪感を覚えず、悔い改める事もない。

“私はハッカー”発言の時、私が感じた違和感の正体は、その「良心、罪悪感、倫理観」の完璧なまでの欠如であった。

さらにこのサイコパスは、「LGBT」、すなわちゲイとバイセクシュアルの性的問題と慢性的欲求不満を抱えており、現実で満たされない性的欲求を、アバターを介したバーチャルセックスで解消している。
件の3D仮想空間でのアバター遊びに入り浸り、決して離れようとしない、もう一つの理由だ。

加えて、好む相手にそれを強要し、苦痛の様子を眺めて楽しむという変態性癖もある。
顔を合わせた時、一番最初に感じたギョッとするような“生臭さ”の正体である。

以下に、Sのテロ活動上の傾向および性格的特徴などを、一式まとめておく。

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◆テロ活動上の行動特性・傾向・クセ等
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1)常に外国人に成り済ます。他国の大規模テロ組織、ハッカー集団を装う。(実は2~3名)

2)多言語を操る(読み書きのみ):中国・韓国・英語・スペイン・ドイツ・アラブ・ロシア語など。

3)策略を好み、常に先手を打たないと気が済まない。

4)主に仮想通貨を強奪。現金に手を出すのは稀(意識的に手を出さない)。

5)“すり替え”と攪乱:犯行・素性の隠蔽の為に、無差別的に破壊・ハッキングを繰り返す。

6)並外れたキー操作スピード(1人分の時間で、ほぼ4~5人分の入力量)。

7)プライバシーの覗き見、ストーキングがライフワーク的な趣味。

8)フィッシング詐欺の仕掛けづくり(メール文章・疑似餌)が趣味。

9)高度な技術を盗み、改変する天才。ハッキングツールに加工。(ゼロからは決して作らない)

10)マルウェア、スパイウェア等を常時作り続けている。

11)作ったハッキングツールは、必ず実験する。他人の持ち物、企業のマシン等を実験台に使う。

12)高性能なPC/サーバーマシンを強奪し、私物化する。

13)個人情報の収集・強奪:アタック前は、予め全情報を必ずまとめて手に入れておく。

14)“ゲーム”と称し、他人の持物、施設・設備機器などを破壊する。


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◆性格的特徴
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A. 常習的に嘘をつく。

B. 善人と裏の顔が真逆。完璧に使い分ける。

C. 驚異の狡猾さ。天才的なワル知恵。

D. 極めて残忍・無慈悲。人の苦痛を見て喜ぶ。

E. 良心・罪悪感・倫理観の欠落。

F. 情緒面が未発達。強い幼児性。

G. 極端に執念深い。何があっても諦めない。ターゲットはどこまでも追い詰める。

H. 強い妄想癖。自身の妄想を自分で信じてしまう傾向がある。

I. 自分が犯した犯罪、責任などを他に擦り付ける。“すり替え”を年中やる。

J. 嘘で人を操り、弱みに付け込む天才。“騙し”は一種の遊び。

K. 欲しいモノは手に入れないと気が済まない。

L. 盗み癖:技術情報/仮想通貨/デジタルコンテンツ(文章・写真イラスト、ゲームアイテム等)

M. LGBT:ゲイ、バイセクシュアル。

N. 強い性欲、慢性的欲求不満。バーチャルセックスで欲求不満を解消。

O. 変態性癖。他人にバーチャルセックス強要し、苦痛を見て楽しむ。

P. 現金の窃盗以外は罪ではないと主張。

Q. 強欲でケチ。好きなモノは金を払わず盗み、手に入れた後は何があっても手放さない。

R. 常に先回りをしないと気が済まない。安心できない(常に不安に駆りたてられている)。

S. 個人情報の収集は一種のコレクション。組織やカード情報等を丸ごと盗むのを好む。

T. 力と権力の誇示、自慢。

U. 教養人、学識のある人間のフリをしようとする。

V. 人真似を好む。他人の台詞・文言などをまるで自分の言葉のように使う。

W. 自分より優れた技術・能力を持つ人間をストーキングし、模写しようとする。

X. 掃除、整理整頓、後片付けが苦手。

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少し補足する。

一つには、フィッシング詐欺用の仕掛け作りが大の得意である。
例えば人が騙されやすい条件や物語をあれこれ考え、そのお膳立てとしてメール文言を整え、片方でウィルスを仕込んだページや罠を用意する。そうした一連の仕掛けづくりを、一種の趣味にしている。

“偽のWAN”に閉じ込められた時、否応なく仕掛けが組み込まれたページを大量に目したが、どれも妄想と傲慢さがよく現れた、Sらしい文言で溢れいていた。
時間をかけ、コツコツ作り上げたものを集めた、まるでコレクション・ルームのようであった。

その一方、STUXNETなどの高度なツールは、大多数が他人から盗んだ技術の寄せ集めで、自分でゼロからプログラムする事はほぼ皆無だ。気に入ったものだけを盗み、加工するのだ。
その部分は一種の天才であり、高効率で次々と高度なエクスプロイトを産み出す理由でもある。

私は専門家ではないが、それらは全てがつぎはぎである為、全体が雑で、プログラムとしては繊細さを欠いた、バランスの悪い作りになっているだろうと想像する。

事実、完全に乗っ取られてしまった件の3Dゲームは、Sが裏から無作為に、且つ自分の都合の良いように弄り回すため、凄まじいバグでまともに動かないという状況が、未だに続いている模様だ。

また整理整頓と片付け、掃除などは、知り合った頃から大の苦手だった。

例えばまき散らした「キノコ」や“胞子”などは、放っておけばやがて足がつく。
だが自分で片付けるのが億劫で、且つ人手も無い為、一定期間が過ぎると自動消滅する、いわゆる“時限付きマルウェア”を、最近は好んで使うようになった。